近年のデータ活用やデジタル技術の進化は、製造業にとって大きな環境変化をもたらしており、当社のような金属の機械加工を手がける町工場も、その影響を強く受け始めています。特に、労働人口の減少や熟練技術者の高齢化が進む中、顧客からはより短納期・高精度な対応が求められており、従来のやり方だけでは限界が見えつつあります。
一方で、よく言われる「人の勘と経験では対応しきれない」とは逆に、私たちの現場ではむしろ勘と経験こそが高度であり、簡単にはデジタル化・数値化できない領域であることも、実感として明らかになってきました。ただし、それに依存し続けるだけでは業務が属人的になり、将来の持続性に大きなリスクがあることも同時に認識しています。
また、単にデジタル技術に頼るだけでは不十分であり、「これまで通り」でも「デジタル偏重」でも通用しない時代に突入しています。そのため、ベテランの知見や判断をいかに可視化・見える化・標準化していくかが、今後の競争力の鍵になると考えています。こうした現実を踏まえ、当社ではデジタル技術とベテランの技術を融合させることで、技術継承や業務効率化の基盤を整え、持続的成長と顧客満足の両立を図ることが重要であると捉えています。
創業以来の実績から得た経験と最新のデジタル技術を組み合わせ、新たな価値を創造し、未来の製造業を変革します。
創業以来培ってきたチャレンジ精神を継承し、常に新しい加工技術の革新を追求します。
お客様の多様なニーズに応える「試作品加工のプロフェッショナル」として、柔軟かつ迅速なソリューションを提供します。
当社では、「ベテランの技術とAI・IoT技術を融合させた次世代の金属加工システムの確立」という経営ビジョンの実現に向け、以下のようなビジネスモデルの方向性を明確に定め、公表しています。まず、「ベテランの技術とAI・IoT技術の融合」により、業務効率化を図り顧客のニーズへの圧倒的対応力を構築することを目指します。さらに、将来的には従来の「受託加工」に依存したモデルから脱却し、「顧客課題を解決するための製造ソリューション提供型モデル」への転換を目指します。これにより、単なる加工業者ではなく、お客様の試作開発や製造工程の最適化に寄与する技術パートナーとしての立ち位置の確立を実現します。
現在10万件以上の加工実績(図面・NCデータ・加工時間など)を高速検索可能にするため、ツール導入+命名ルールの標準化+自動リネームプログラムの開発を行います。担当者がすぐに再利用データへアクセス可能とすることで、手戻り防止とリードタイム短縮を図ります。属人化を排除し、「データに基づいた意思決定」へ移行していきます。
ベテランの加工ノウハウ、判断基準、経験則のドキュメント・映像・データベース化に取り組みます。新人教育と並行しながら育成プロセスの中でノウハウを体系化します。加工条件、段取り、工具選定などをAI・システム化し、判断支援ツールの構築へ展開します。
過去の加工時間・条件・実績から類似案件を検索し、AIが概算見積を提示します。商談初期におけるレスポンスを高速化し、営業力を強化します。将来的にはホームページに自動見積ツールを搭載し、顧客がセルフで概算確認可能な仕組みへ移行していきます。見積依頼のあった顧客への商談アプローチをすることで新規顧客の開拓へ繋げます。
各種工作機械の取扱説明書・メンテナンス情報をAIにナレッジ化を進め、故障時・部品交換時に必要な情報(品番、手順など)をAIチャット等で即時取得可能にします。ダウンタイム短縮、作業時間短縮を通じて生産性と品質の安定性を確保します。
加工条件、工数、納期、品質、原価などの案件データを一元管理する社内データベースを構築します。リアルタイムでの可視化・分析を可能にするツールを開発し、現場判断から経営判断までを支援します。
基本的には、全社員でDX推進に取り組んでいきますが、2023年から有志で発足されたDX推進メンバーを中心に、自社独自システムの開発・運用を担う体制を整えています。この推進メンバーは、業務課題に精通し、パソコンやデジタル技術に強みを持つメンバーで構成されており、現場の声をDXに反映させる橋渡し役として、重要な役割を担っています。
DX推進を一過性の取り組みではなく、組織文化として定着させるために、以下の価値観を社員全体に浸透させていきます。
プログラミング、データベース設計、生成AIの活用など、DXに関わる各種テーマを学べるオンライン学習コンテンツを用意しており、各メンバーがスキルを高められるよう支援しています。
この学習環境はDX推進チームに限らず、福利厚生の一環として全社員に開放しており、希望者は誰でも利用できる体制を整えています。これにより、社内全体におけるデジタルリテラシーの底上げを図っています。
DXに関する学習・実装・社内運用に携わる社員は、削減効果額や取り組み度合をもとにグレード評価を行い、昇給に反映しています。単なる学習にとどまらず、キャリア形成の一環として正当に評価される仕組みを整備しています。
現在、DX推進に特化した人材の外部採用は行っておりません。その理由は、現場業務への深い理解がなければ、現実的かつ有効なDXの実装が困難であると考えているためです。当社では、まず現場業務(オペレーション)を経験していただき、業務フローや課題を理解した上で、DXに興味を持つ社員が推進チームへ参加するという育成・登用方針を取っています。
このように、社内の実務に根差した形でDX人材を育成・確保する体制を重視しており、単なる外部専門家任せではなく、自社に最適なDXを自社で設計・運用できる力の育成を目指しています。まずはオペレーターとしての経験を積んでいただき、そのなかからDXに興味のある方にDXに参加してもらう体制を取っています。
社内ネットワークには、過去の加工実績や受注データなど、今後のデータ利活用に資する情報が多数蓄積されています。これらのデータを整理・構造化し、見積自動化や利益率の可視化、売上分析など、業務の意思決定に活かしていく方針です。
全社員が社内チャットを利用できる環境が整っており、今後はこのチャット基盤を使った情報共有・ナレッジ蓄積などを通じて、業務のスピードと精度を高めていきます。
社員の現場業務に根ざしたニーズをもとに、DX推進チームが中心となって社内向けのWebシステムや自動化ツールを開発・改善していきます。
デジタル機器は整備されているものの、まだ十分に使いこなせていない層の社員に対しては、DX推進チームがOJTや勉強会形式でのサポートを行い、全社的なDX素地の底上げを進めていきます。
当社では、DXを通じて間接部門の工数削減と現場の稼働率向上を実現し、最終的には利益率の改善や1人当たりの売上高(労働生産性)向上を目標としています。
<モニタリング項目>
これらの数値は随時、全社員閲覧可能なスプレッドシートで確認することができます。さらに、営業利益率については半期ごとに全社報告会でも共有されており、今後はDX活動による効率化が経営指標にどう影響しているかを継続的に確認できる体制を整えます。
当社では、デジタル技術とベテランの技能との融合こそが、日本のものづくりの未来を切り開く鍵であると考えています。金属加工業を取り巻く環境は日々変化し、AIやIoTなどの技術革新は業界全体に大きな影響を与え始めています。こうした外部の動向を柔軟に取り入れつつ、これまでに培ってきた技術力を最大限に活かすため、現場の課題や業務フローを見直し、「人にしかできないこと」と「デジタルで支援・代替できること」の見極めを進めています。次世代の製造業へと進化し、社会に必要とされ続ける企業であるために、変化を恐れず、ものづくりの本質を守り抜くこと。それが私たちの姿勢であり、私たちの使命です。
2025年5月23日
高橋鉄工株式会社
代表取締役 高橋光彦
高橋鉄工株式会社(以下、当社)は、当社の情報資産を事故・災害・犯罪などの脅威から守り、お客様ならびに社会の信頼に応えるべく、以下の方針に基づき全社で情報セキュリティに取り組みます。